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ぐだぐだな日常と、小話と。
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 勉強しろ自分。

 日がな一日パソコンいじってちゃあ世話ないですね。

 そういえばさっき地震がありました。関東大震災怖いよ。関西あたりに逃げときますか。



 =或る賢者の日常= 2

 
 ‥不覚。

 どうやら、いつの間にか眠ってしまったようです。
 
 すぐに我に返り、辺りを見回しましたが、既にテア様の姿はありません。
肩にテア様の外衣がかかっているので、テア様は私に気付かれたようですね。

 それにしても、恐れ多いです。何がって、この外衣です。これ、見た目どおりとても高価なんですよ。多分風邪をひかぬようにと、テア様がかけて下さったのでしょう。そういうところは優しいのですが。

 取り敢えず綺麗に畳んでお返ししましょう。

「次は‥あそこでしょうか」

 テア様は大変分かりやすい性格ですので、猫と睡眠を補給した後は、当然本かお酒でしょう。お酒に酔うと本に集中できないとこの前ぼやいていたので、ほぼ確実に本のたくさんある場所に向かっている筈です。
 
 そう思って立ち上がろうとしたとき、何やら膝が重いなあと思って下を見れば、茶色いぶちの猫が私の膝の上に陣取っていました。

 ‥‥‥葛藤です。私も猫は嫌いではありません。むしろ好きなのですが、これは如何ともしがたい。ここは心を鬼にしなければいけないと分かりつつも‥ああ、そんな顔で寝ないで下さい。起こしたくないけれど、起さなければテア様を捕まえに行くことができません。お願いだから起きてください、猫さん。

 と、祈る思いで猫を見つめますが、起きる気配はありません。

 ‥仕方ありません。猫さんが起きるまでここに留まることにしましょう。ほら、神の教えにもあるじゃないですか。博愛の精神を大事にしろと。こんなに可愛らしい猫の睡眠を守っていたせいならば、仕事を完璧に遂行できなくとも仕方ありません。

 それに、テア様は一度本に嵌まり込めばなかなか戻ってきません。数刻は大丈夫なはずです。取り敢えず今は、一人、静かに本を読ませてあげましょう。

 そう決意して膝を見ると、あれ、猫さんお目覚めで?
先ほどまでぐっすりと眠っていた猫さんが私の膝の上で大あくびをしています。
‥人が折角決意した途端にそれですか、あなた。

「こんにちは」

 話しかけてみましたが、ちらとこちらを見ただけで、どこかへ行ってしまいました。
‥‥‥そうですか、私は都合のいい女ですか。あなたにとって私は丁度いい座布団でしかなかったのですね。

 少し切ない気分になりましたが、折角猫さんがどいてくれたならば、仕事遂行です。

「テア様」 

「げ」

「はい、捕まえました」

 またもや一発でビンゴ。街で2番目の蔵書量を誇る我が神殿の書物室で、文字通り本に埋もれていました。私の顔を見るなり逃げようとしたところを、しっかり袖をつかんで離しません。
 
「何しに来た」

「テア様の見張りです。羽目を外し過ぎないようにと。それと、これありがとうございました」

 綺麗に畳んだ外衣を差し出すと、テア様はふいと顔を背けました。

「いらないから離せ」

「私のことは銅像か何かだと思ってくださればいいので」

「そんなに喋る銅像があるか‥‥いや、あったな。星暦400年頃だったか‥古代魔術で、動く銅像があった。ごつい見た目の割りに饒舌で、しょっちゅう通りすがりの者に話しかけては驚かせていた」

「そうなんですか」

 世の中にはまだまだ知らないこと、不思議なことがたくさんありますね。テア様の傍にいると、ありえないことは無いのではないかと思えてきます。

「その話、少し興味があります」

 テア様は聞けば大抵のことは教えてくれます。分かった、と頷くと、両手に持った本を読みながら話し始めました。これが賢者たる所以でしょう。

 物覚えの悪い私にとっては信じられないことですが、これで、両手に持った本の内容もしっかりと覚えているんです。その上、淀みなく別の知識も思い出し、話すことができる。
テア様の記憶力はずば抜けています。

「その古代帝国は、何故滅びてしまったんでしょう」

「魔術にばかり頼りすぎたからだ。時代を見なかった」

 ふむふむ。勉強になりますね。そのまま半刻ほど、滅亡した古代帝国の話を聞いていましたが、唐突に思い出したことがありました。そうです、聞きたいことがあったんですよ。

「そういえば、北の方には職種を現す言葉を名前に入れる習慣があるとか」

「いきなり話が飛ぶな」

 テア様はため息を吐きました。すみません。私、順序をおって話すのは得意ではありません。

「はい。今思い出したので。それで、確かテア様の名前も確か、途中に何か入っていたような‥」

「テア=セディク=エルフェンラート」

 相変わらず長い名前です。テア=エルで十分です。

「そう、その、セディって奴です」

「職名という」

「しきな?」

「ああ。これは、昔はこの地方にもあった習慣だが、今は職を自由に選べるようになってきた。だから、ここのような中央の方では廃れてきてるが、まだ北と南には残っている」

 成程、だからですか。流石、賢者ですね。説明慣れしています。

「神官は基本的に一生の職だから、職名をもっていることが多い。ちなみにセディクは賢者という意味だ」

「へぇ‥‥知りませんでした」

「仮にも神殿で働くのだから、これくらいは知っておくことだ」

 皮肉るように言われましたが、けろりと言ってみせます。

「今知ったので大丈夫です」

「‥‥そうだな」

「ああ、そういえば」

「まだ何かあるのか」

 まだ聞きたいことがあるので。

「はい。春迎えの祭りがあったじゃないですか」

 春迎えの祭りは、文字通り、春を迎えるためのお祭りです。毎年、最後の雪が溶けた次の日に、盛大に催されます。

「‥3月ほど前だな」

「それのときに、四季の精霊におくられる名前も、確か職名がありません?」

 伝承によると、その年の季節がちゃんと巡ってくるようにしてくれる精霊がいるそうです。よく知りませんが、毎年春迎えの日に生まれるそうで、そのときに巫女様が名を贈るんです。

「そうだ。それも職名だ‥」

「長くて覚えてませんけど」

 いっつもいっつも、長い上に発音しにくいんですよね。精霊もそんな長い名前をつけられたら逆に迷惑じゃないでしょうか。

「四季の精霊って本当にいるんですか」

「居るぞ。精霊と友になった人間の話もあるしな‥」

「本当ですか。知らなかった」

 精霊って、人間にも見えることがあるんですね。じゃあ、もしかしたら私もいつか、精霊と友達になれるかも。

「‥‥本当に、よく喋る銅像だな」

「何か言いました?」

「言った」

 素直ですね。でも、ここで引き下がる私ではありません。

「なんて?」

「よく喋るどうぞ」

「はい?」

「‥‥嫌がらせか」

 やっと気付きましたか。でも、ちょっと違います。

「いいえ。質問攻めは、半分は私から逃げた仕返しです。探す方の身にもなって下さい」
 
 うんざりしている事ぐらい分かっています。
 
「‥‥‥‥‥」

「もう半分は私の好奇心です。いつも色々教えてくださってありがとうございます」

「本当にな」

「はい。物知りなテア様は、私の先生ですから」

 にっこり笑って頭を下げ、上げると、疲れたような、それでも少し照れているような顔がありました。

 テア様は基本的に、人にものを教えるのは好きですし、教えを乞われるのもある種、生きがいのようなものです。ただ、いつも仕事としてそれがみっちり詰まっている上に、書かなければいけない書類もあるので、疲れてしまうこともありますが。
 
 私は、テア様のもとで働けてよかったと思います。
思わぬ知識との遭遇。これも、私がテア様に仕えたいと思った理由のひとつですから。




 ==========



 続いたり

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